wooden or brass ? part3
僕は学校終わりに街へ繰り出すことにした。
いつも普段は所属している部活のパーカーばかり着ていたが、この日のために服を一式新しく買った。
よし、完璧や
後はひたすら女性に声をかけるだけ。
流れはこうだ。
まず、歩いている女性に声をかける
次に、〜に行きたいんですが、道を教えてくださいと聞く。
これは初心者向けのナンパのオープナーで道聞きオープナーという。
よし、いくべ!!!
…
……
………
…………
……………
…しかし現実は甘かった。
怖い。怖すぎる。
女性に声をかけられない。あたふたしている間に過ぎ去ってしまう。
気がついたら僕は町中を6時間程歩き彷徨っているだけだった。
逃げた後に来るあの後悔と悔しさ。
僕は道を聞くことさえできない弱い人間。
そして襲って来る。これまでの過去。
今まで女に振られて、あんだけ泣いたのに。あんだけ悔しかったのに。
思えば、彼女を作るためだけなのに、なんで俺はナンパなんてしてるんだ??
普通、彼女ができる過程なんて、部活やサークル、バイトとかにもあるはずだ。
なぜ俺にはそれがない?
街にはなんの意味もなく6時間彷徨った後は吐き気がした。頭が狂いそうだった。
限界がきて、帰宅の電車に乗る。
気がつけば深夜の12時だった。
ーーーーーー
この日は土曜
僕が起きたのは次の日の午後5時で、ちょうど外では夜から始まる町のお祭りが始まる花火が上がった頃だった。
こんなに寝てしまっていたのか…
昨日は憔悴しきって、風呂にも入らず布団に入った。
なんて無駄な時間を過ごしたのか…
起きてすぐ、スマホを開く。
ラインの通知がいくつか溜まっており、それらを消去していく。毎朝の日課だ(夜だけど)
次にツイッターを開いて…と、これじゃあ今までの日々となんら変わらないじゃないか。
このとき絶望の感情が徐々に心を蝕み始めていた。
続く。
wooden or brass ? part2
僕はその頃ツイッターをやり始めていたときだった。
ツイートの内容は最初の頃こそ、ご飯の画像をあげたり、日々の何気ない生活を記したものだったが、次第に女に振られた腹いせに女ディスりのツイートばかりしていて、ついには後輩女子からブロックされる事態にも陥った。
俺のツイートを見た女どもは嫌な気分になってしまえばいいさ。
でも自分が一番わかっていた。
こんなこと無意味だと。
僕は毎日吐き溜めのような日々を送っていた
ーーーー
ある夏の夜、僕は自分のベッドに横になりながら、使い古して黒ずんだスマホを片手にネットサーフィンをしていた。
外では蝉の鳴き声と田んぼのカエルの声が聞こえてくる。
そこでふと、なにを思ったのか、気づけばモテる方法について調べていた。
すると、どのサイトに飛んでも
コミュ力が大事!
清潔感を!
出会いの場を増やそう!
載ってることはほぼ共通していることだ
はは、今の僕にはどれも欠けているものばかりじゃないか…笑
しかし、なにより腹が立ったのは
女性は優しい男性が好き、だ
自分を優しい男などとは言わない。でも優しくしてきた結果嫌な思いばかりしたし、優しい男が好きだなんて嘘に決まってる!
もういい、寝よう。
どうせ俺なんて女性と付き合えることなんてできないんだ。
「ん?なんだれこれ」
スマホを閉じようとした瞬間、何かを見つけた。
冴えない男の周りに女性が描かれている
タイトルには
僕は愛を証明しようと思う。
一冊の本だ。
いつもならスルーしてたのかもしれないが、このときはなぜか気になってしまい、kindleで購入した。
しかし、僕はこのときとんでもない魔書を手に入れてしまったのだ。
内容はこうだ。
主人公の弁理士の渡辺には付き合っている女性がいたが、後から彼女が不倫をしていることが発覚し、さんざ利用されたあげく連絡も不通になる。
その後も様々な女性との出会いはあったが、全く上手くいかず、フラれ続けの日々を送る。
なんだこれ、こいつ俺とおんなじやん笑
しかし、続きがある。
渡辺はある日、あるナンパ師と出会う。
この人物が物語の中のキーマンであった。
彼は渡辺にナンパの術の全てを教えた。
そしてページを数ページめくると、既に彼はかつてのモテない男ではなくなった。
この本の核心的な部分は恋愛を確率のゲームと定義しているということである。
そしてそのゲームに勝つには様々なテクノロジーを駆使していきながら、進めて行くといった感じだ。
恋愛なんてそれこそ人と人が好きになればいいくらいにしか思っていなかった僕には衝撃的だった
ましてや、ナンパをするような輩などろくな人間がいない、そう思っていた。
僕はこれにとても興味が湧いた
ナンパか…明日早速行ってみるか…?!
世界が動き出した感じがした
wooden or brass ?
「やぁ!この近くでちょうどこのくらいのペンギンみなかった?笑」
見知らぬ男女同士が道端で知り合う。
普段の日常生活では絶対に知り合うことのない二人。そこからはどんな関係にも発展しうる。
例えるなら、何も加味していないプレーン二郎ラーメンに唐辛子をかければスパイシーなものに生まれ変わるし、そのほかコショウやカレースパイスもかければまったく別のものになる。
「とりあえず、軽く食べに行こうか!」
可能性は無限大だ。
ーーーーーー
この頃の僕は相変わらずモテなかった。
大学での出会いは零。
出会い系をちょくちょくやるも、いくつかの出会いがあったがなかなかうまくいかない。
どうしてだ?
周りにはたくさんの男女連れがいるのに。
僕の周りの友達も皆、うまくいってる奴らばっかりだった。
僕は何のために生まれてきたんだろう。
ただ、ただ愛されたい。
その願いすら叶わない。俺の人生とはなんだ。
しかしある日、あの出会いにより僕の人生の確変が起きた
続く
もう好きじゃない。ラインもしてこないで。part3
僕らはその後も色々な場所へ遊びにいった。
お互いお金はなかったけど、一緒にいられるだけで幸せだった。
元々彼女は体が弱く、遊びに行くことも少なかったので、なにもかもが新鮮だったようだ。彼女にはツイッターやユーチューブ、アニメやそのほか無料で使えるツールは全て教えてあげた。
特にアニメでは当時流行っていたおそ松さんには僕に教えられてからは全話見てからハマったそうだ。
今日のデートコースはスターバックス。
彼女のお気に入りはスターバックスのダークモカフラペチーノのグランデサイズだ。これも僕が教えてあげたものだ。スターバックスのコーヒーのいい匂いがする空間で僕らは会話を楽しんだ。
その日彼女は色々なことを打ち明けてくれた。
実は自分が鬱であること、そして発達障害であるADHDであることを話してくれた。
ADHDとは注意欠陥多動性障害という脳の先天的な障害のことで、自分の得意なことなどは圧倒的な集中力を発揮することができるが、それ以外はケアレスミスが多いという特徴を持つ。
彼女は自分に自信をなくし、徐々に自分を追い込み病気になってしまった。
なんとかしてあげたい。
そこで僕はハチミツをこぼした時のことを思い出した。そう、笑いだ。彼女には笑ってもらえる時間を増やしてあげればいいんだ。
それに鬱には楽しい思い出をたくさん増やせば、セロトニンの分泌も増え、完治に近づくという。僕はひたすら彼女を笑顔にする努力を惜しまなかった。
僕は彼女だけのお笑い芸人だった。
愛情表現でテーブルの上で彼女の手に触れた。冷たかった。おそらく自律神経の乱れからくるのだろう。僕は彼女の手が温かくなるまで握り続けた。それを見て、窓の外からは道歩く人からの目線も感じた。後ろを振り向いてまで見てくる人もいた。
「みんな外から見てて、恥ずかしいよ笑」
でも恥ずかしながらも彼女は嬉しそうだった。
一生彼女を守る。そう誓った。
帰りの改札まではお互い手を繋いで歩いた。
お互いの手を最後まで温かく感じた。
僕らはその後も何度も会った。
お互いの愛を感じていた。
そしてひたすら、彼女を笑わせていた。
「友達じゃだめなの?」
しかし、数週間後にあの別れは突然きた
僕はその日、大学の体育館で運動の習慣をつけるためにジョギングをしていた。汗を流し、体を鍛えて彼女のために強くなる。その思いだけをもって。
よし、今日もやりきった。いい汗もかいて、最高だ!
更衣室に戻り、ロッカーからスマホをとりだすと、愛する彼女からラインが来ていた。
しかしその瞬間、来ていたメッセージの意味が一瞬理解できなかった。
「友達じゃ、だめなの?」
体の汗が引いた。
僕は間を置かずにすぐ返信した。
好きだってそっちも言ってたしょ?付き合ってるんでしょ?
ごめん、もうそういう好きじゃないんだ(笑)
彼女からは一定のテンポでラインがくる。
しかもどこか軽く思っているような感じで。
僕はキレた。
ふざけるな。じゃああの好きはなんだったんだよ。
どうやら僕は彼女にとっての本当の
いわゆる、面白くてただの優しい、都合のいい奴に過ぎなかったようだ。
この瞬間から僕の中の何かが崩れ落ちた。
なぜあんなにも好きと言ってくれていたのに、友達?
俺は友達になりたくてそばにいたんじゃない。一人の女性として君を愛していたんだ。
しかし、この時は理解したくなくても、自分の中でははっきりわかっていた。
もう、彼女の世界から男としての僕は消えたのだ。
くどいわ
もう好きじゃない。ラインもしてこないで。
この一言を最後に彼女とは連絡が取れなくなった。
そのとき更衣室で僕は一人ぽつんと立っていた。
帰り道、外はすでに夕暮れだった。
太陽は一人、地平線へと静かに沈みながらどことなく寂しげであった。
周りにはたくさんの人が歩いている。中には仕事帰りのサラリーマン、学校終わりの学生、そして、カップル連れだろうか、二人ともどこかへ向かって歩いている。幸せそうに。
人を好きになるってなんだ。
女たちは都合のいいと思った男は片っ端から利用し、搾取する。今回のあいつもそうだった。今までの他の女どもと変わらない。
なんでこんなひどいことができる?
それでも人間かよ。
彼女の存在が消えたことで、僕の体の一部が抜き取られたような感じがした。
今までも女性との付き合いで何度かフラれてしまったことはあったが、今回の件だけは別。
この頃から女性に対して軽蔑の感情を持ち始めていた。
そしてもう何も考えらなくなった。
END
もう好きじゃない。ラインもしてこないで。part2
会話が途切れることなくパンケーキ屋さんに到着。二人とも初対面とは思えないくらい打ち解けていた。
到着したパンケーキ屋はそこそこ有名なところで、中でも悪魔のパンケーキと天使のパンケーキという、2つの対をなしたタイプの一品がインスタ映えするということで女性にも人気があった。
僕が悪魔か天使かどちらを食べるかは決まっていた。悪魔だ。悪魔の方はチョコレートの可食部分が比較的多く、悪魔の尻尾もチョコレートでできている。家でバースデイパーティーのケーキを食べる時も、基本的にはチョコレートの家などは全て自分が食べ、後に残った砂糖でできてるサンタなどは弟に食べさせていた(そのせいで弟は虫歯になった)。
そのくらいチョコレートが好きだ。
そんな僕の考えを悟ったのか、彼女は天使を選んだ。
「チョコレートたくさんあるほうでいいよ。私のイチゴと交換ね(^^)」
さすが俺のmy angel、君こそがパンケーキの天使だ。
僕はすかさず、チョコレート部分の悪魔の尻尾を彼女にあげて、もらったイチゴを丸呑みした。
ここのお店のいいところはハチミツの瓶が各テーブルに置かれ、ハチミツかけ放題なことだ。〜放題に目がない僕はすぐにハチミツに手を伸ばした。しかしハチミツは甘くても人生は甘くなかった。注いでいるときに瓶の蓋が外れ、ハチミツの濁流がパンケーキに降り注いだ。
慌てて戻しても時すでに遅し。悪魔のパンケーキがハチミツの悪魔と化した。
でも彼女にはツボだったらしい。今日1で一番笑っていた。
口の中はハチミツまみれでくどく、はっきりいって美味しくない。例えるなら、野菜のまったくない脂だらけの二郎ラーメン、山二郎といったところか。
でも食べる姿を見ておかしく笑ってくれている彼女の姿を見ると、美味しく感じれて完食できた。
なぜなら彼女の幸せそうな姿が僕にとっての1番のオカズだったのだから
帰り際、まだ時間があるので、映画を観に行くことにした。映画自体はショッキングな内容だ。メキシコの麻薬組織カルテルとの抗争を描く内容でR指定もついている。ハチミツまみれのモノを食べた後には辛い。
しかし、怖い状況に二人でいると恋愛モードになる吊り橋効果が働き、手を繋ぐことまではいけなかったが、よりいっそう彼女との'好き'が感じられた。
映画が終わった後はもう夕刻を刻み、あたりには帰宅ラッシュで帰る人々で溢れかえっていた。
時間が来たので彼女とはもうお別れだ。
「まだ一緒にいたい。」
僕らは二人そう感じていた。
彼女を改札まで送っていくことにした。
切符を買って改札を通る。その姿はどこか寂しそうだった。僕は彼女の姿が見えなくなるまで手を振り続けてた。
See you later
彼女から30秒後くらいでラインがきた。
「また会いたい。今日は楽しかった」
どうやら初日のデートは成功したようだ
Thank you ,honey!
続く。
もう好きじゃない。ラインもしてこないで。
彼女とは出会い系サイトで出会った。
この頃僕は大学2年生の2回目。肌着ではやや寒く、外ではほろほろと雪が降り始めるころだ。
この頃は異性とは手を繋ぐとごろか、コミュニケーションすらままならないほどだった。
入っていたサークルや部活の女の子には振られ続け、女の人に対して自信がまったくなかった。
嗚呼、僕は誰からも愛されず、この世に未練を残して一人で死んでいくんだ
そんなある時、僕はラーメン二郎で店長の顔に怯えながら麺を啜っている時にその時にやっていた出会い系サイトから一つの通知がきた。 そう、これが彼女との出会いの始まりだった。
彼女とはメールのやりとりでパンケーキの話で盛り上がり、会うまでに時間はかからなかった。
よし、パンケーキを食べにいこう。
僕の提案で、彼女はそれをokしてくれた
後日、二人で集合する場所は目印でなにかと便利な札幌駅の白いドーナツみたいなところだ。
出会い系での醍醐味のひとつは会うまでの緊張感だ。どんな子がくるんだろう…?やばい奴ならどう逃げよう…? 相手がどんな人によって、その日は天国か地獄、ラーメン二郎か山二郎かのどちらかである。
お、ライン通知。
「ついたよ〜」
ハッと前を見る。彼女がそこにいた。
彼女は季節に合わせた厚着をして、緊張からくるのか、どこかぎこちないながらも笑顔で手を振っていた。
なんだよ、ふつうにかわいいじゃんか。
その後歩きながら、お互いのことを話しながらパンケーキ屋さんに向かった。
この時、すでに自分は彼女のことを好きになっていた。
続く